レコーディングバトン顛末記
2020-05-16 19:20
コロナによる自粛生活も長くなり、世間はオンラインで楽しむ方法を試行錯誤している状況かと思います。
mixi全盛期に流行ったバトンが再び流行ったり、星野源の『うちで踊ろう』は多くの人がパフォーマンス動画を作成している様です。
GWのそんな中、音楽で出来るバトンは何かなと考えた処、レコーディングバトンなんか面白いんじゃないかなと思いついた次第。
と云う訳で今回はレコーディングバトンの一部始終を認めたいと思います。
先ずは完成動画をご覧下さい。
紆余曲折のレコーディングバトン16日間(4.26-5.11)
さて、ゲームは絶妙なルールによって面白さが決まる訳ですが、先ずこのバトンのルールは以下のいずれかかなと考えました。
- A案:自由度100%、土台なし、完全真っ新からスタート
- B案:最小限の決まり事だけ決めてスタート
- C案:コードやメロディ、詞などを予め用意して、ある程度完成形がイメージ出来る形でスタート
下に行くほどミュージシャンの裁量が少なくなるのですが、せっかく初の試みなので自分で制御出来る部分を少なくしようと思い、B案で進める事を決めました。
スタート時は、私がBFD3で作成した約1分間のドラムのみ。
判っているのは、
- BPM(テンポ)が106である事
- 3つの展開に分かれている事
- 各所にキメがある事
のみ。
そのバトンを宍戸圭介氏に渡す処からスタートします。
その際に定めたルールは以下の記載のみ。
- 壱:音素材に合わせて楽器をひとつ好きにレコーディング
- 弐:次のミュージシャンを指名(タグ付け)してレコーディング素材を渡す
- 参:壱〜弐を繰り返し適当なところでMIXして完成
※参加条件は自宅にレコーディング環境のある方
[一番手]宍戸圭介|土台を丸投げされた男

この時点では明るい曲か、暗い曲か、インスト曲か、歌モノか、どんな楽器が入るのかも全く判りません。
皆さんも薄々気付いていると思いますが、このルールで最も大変なのは最初にバトンを受け取った人になります(笑
一番手はベーシストの宍戸圭介氏。
そこは文句を云い乍らもしっかり方向性を作って下さいました。
「そのキメでそう合わせてくるか」と自分では想像もしないアレンジが施され、このバトンの面白さを感じる訳です。
この段階を経て、この後に続くミュージシャンは自分が何をすべきかイメージし易くなるのですね。
映えある『無茶振りされたで賞』にノミネートさせて頂きたいと思います。
[二番手]高村尚平|バトンの担い手探しに苦難

二番手はギタースクール講師のギタリスト、高村尚平。
SNSにコメントした事で巻き込まれます。
もう、この時点でファンクな曲調だと判っている状態ですが、そこは得手の高村尚平、華麗なカッティングプレイが施されます。
しかし、ここで次のバトンがなかなか渡せず立ち往生。
結果、春山弘臣とSuuh-3の二者に渡るのであります。
[三番手]春山弘臣|疲れ切った一日の終わりに収録

三番手はシンガーソングライター春山弘臣。
多忙な毎日の中、疲労困憊な一日の終わりの時間を縫ってレコーディング。
得意のアコースティックギターでコード感の広がりを作ってくれます。
#9thコードを入れるあたりが春山らしい。
ここまでで演奏上のおおよその基礎が固まります。
[四番手]Suuh-3|まさかのツインベース

四番手はベーシストのSuuh-3。
二人目のベースと云う事でワウペダルを用いた演奏をプラス。
ファンクと云えばワカチコなので、更に雰囲気が増したんじゃないでしょうか。
そこからバトンは再び私に戻って参ります。
[五番手]洪 泰和|ホントはもう一人鍵盤弾きが欲しかった

鍵盤楽器で想定するだけでも、オルガン、クラビネット、エレクトリックピアノ、シンセサイザーなど選択肢は多岐に渡りますが、ルール的にひとつに絞らねばならない処が非常に悩ましい訳です。
土台のリズムや中域が比較的固まっていたので、高音域の広がりを付けられる様にオルガンを選択。
そこまでの仕上がりから、歌モノなイメージが見えて来たので、ボーカリストの内海奈緒氏、更にグルーヴ感が増すと良いなと思いパーカッションの村上海人君でフィニッシュ。
[六番手]内海奈緒|作詞作曲も丸投げ

演奏は固まっているものの、歌えと云われてもこの時点でメロディも歌詞もありません。
そう、作らねばならないのです。
そして例によって丸投げ。
それでも短時間で演奏にがっつりマッチさせて作詞作曲してくれたのは六番手のボーカリスト内海奈緒氏。
当初、歌詞のテーマを相談していて、「『うちで踊ろう』的なスタートだけど曲調的には「籠り疲れたから発散させろ!」って云う不満爆発な感じですかね。」って話をしていたら、何か降りて来たらしくサクッと作って下さいました。
流石。
こちらも『無茶振りされたで賞』にノミネートさせて頂きたいと思います。
[七番手]村上海人|締めでグルーヴマシマシに

ラスト七番手はパーカッショニスト村上海人君。
まさか生のパーカッションを録音出来るとは思ってなかったものの、たまたま彼の所属するバンドの宅録映像を観ていけそうだなと思い声を掛けたら快諾。
翌日には仕上がっていると云う。
スピーディ。
様々な打楽器が加わって更にノリが良くなります。
中間パートのカウベルが好き。
西ケ谷元紀|作品クオリティを押し上げ

さて、収録は終わったもののレコーディングはこれで終わらないのが難しい処。
ミックスしてトラックダウンして漸くまとまった音として聴ける訳ですが、当然それも専門的な知識や技術が必要な訳です。
困っていた処に声を掛けて頂いたのが、ギタリストの西ケ谷元紀氏。
短時間でそれぞれの楽器がバランスよく聴ける様に仕上げて下さいました。
ありがたや、ありがたや。
これで楽曲が完成。
曲タイトルは『焔』
歌詞から熱の開放の様なイメージを持ったので、燃え盛る様に曲タイトルを『焔』(ほむら)としました。
今夜は不思議な夢を
あなたと一緒に見たい
音にまみれ 酒にまみれ
今すぐ It’s the partynight!!!!!
I let my feelings out
あぁ 叫べ 祈れ 叶え
歌え 放て 心のままに
SNSは動画でアウトプット
レコーディングバトンなので音源が完成したら終わりではあるのですが、そこはSNS動画時代、拡散するには動画と一緒にした方が効果的。
作品の完成度も高まったのでここは気合入れて動画まで作ろうと決意。
ただ、当初の想定にないので追加オーダーとなってしまい、参加者の皆さんに苦労を掛けたのは云うまでもありません。
動画の分割編集をした事がないので手法を学ぶ事から始める訳です。
編集にはAdobe Premiere Proを使用。
プロツールだけあって、難しい事この上なし。
表現方法を探すのもなかなか手間なので、ホントはこんな作り方しないだろうなと思い乍らも最終的には習得している方法をあれこれ駆使して完成させました。
終わりに
コロナによる世界的な自粛生活が齎した影響は、芸術、音楽の分野にも及んでおり、そんな中でも何が出来るかを強制的に模索させられている状況になっています。
インターネットの普及やテクノロジーの発達により、新たな価値や表現方法が生み出せる事は、このバトンを以って僅かばかりですが体験する事が出来たと思います。
私は元々DTMから音楽活動を開始している人間なので、自宅での演奏環境や制作環境は幾らか持ち合わせておりますが、多くのミュージシャンが同様の環境に対応出来れば、表現できる幅は広がるのではないかと少なからず思う処です。
勿論、音を出し難い環境もあったり、楽器によっては難しいものもあると思いますが、今出来ない事をそのままやろうとして苦悩するのではなく、多角的な視点と柔軟な発想を持てば選択肢は増やせるのではないかと。
だってMacには無料で音楽編集ツール(GarageBand)は付いてくるし、巷には安価で高性能なオーディオインターフェースは多いし、ノウハウはそこらへんに転がっている。
ましてや昨今ではスマホでの制作環境も増えて来てるときた。
何十万円も掛けて環境作って、何年も掛けて技術習得していた時代とは全く異なった非常に有難い時代になっているので、そこを利用しない手はないですよアナタ!
これを期にコロナ後の新たな世界を考えてみるのも面白いかもしれません。
私は惰性な人間で、新しいものに挑戦したり学んだりが億劫な人間ですが、今後を楽しむ為に少しは重い腰を上げてみないとなと思った次第です。
- 2020-05-16
- カテゴリー: コラム